平成30年度活動報告

神戸薬科大学第12回がんプロ講演会

平成30年10月27日 神戸薬科大学第12回がんプロ講演会

平成30年10月27日(土)に神戸薬科大学10号館4階会議室において、「神戸薬科大学第12回がんプロ講演会」を開催し、24名が参加されました。

今回のテーマは「小児がん治療 ~子どもと家族にとって大切なこと~」で、小児のがん治療において先進的な医療に携わっておられる3名の先生方に講演をしていただきました。

最初の講演は、チャイルド・ケモ・クリニック院長で神戸市中央区のチャイルド・ケモ・ハウスの創設者でもある楠木重範先生に「小児がん治療の現状とチャイルド・ケモ・ハウスの取り組み」について講演していただきました。小児がんは誰でもが罹患する可能性のある病気で、1万人にひとりの割合で発生し、日本では年間2,500人のこどもが小児がんと診断されます。治癒率は60年前には20%前後であったのが、現在では70~80%に向上しています。これは副作用を抑える技術が向上して、抗がん剤の量を増やすことができるようになったためです。小児はがん細胞の活動も活発であるため、早期の発見が治癒率に影響することはありません。遺伝や親の育て方で発病することもないため、国民全体で知識を共有して小児がんに対する偏見をなくして、より良い治療に結び付けていかなければなりません。小児がんに抗がん剤を投与したときの副作用としては、骨髄抑制時の皮膚障害が多く、おむつかぶれや末梢ルートや尿道カテーテルにも注意が必要で、水疱や鼻血にも丁寧なケアをしなければいけません。乳幼児よりも10歳以上の患者のほうが吐き気や嘔吐が多く、10歳以上の女性患者にステロイドを大量に投与すると大腿骨頭壊死をおこしやすいことも知られています。小児がんでは「がんになっても笑顔で育つ」ことが大事なことであり、チャイルド・ケモ・ハウスは患者だけでなく家族やきょうだいも含めて支える医療を行う場所です。病院と住居が直結していて、患者のきょうだいを専任でケアするスタッフもいるとのことでした。

2番目の講演は、大阪大学医学部附属病院小児医療センターのチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)で、チャイルド・ケモ・ハウスの理事でもある馬戸史子先生に「小児がん治療を受ける子ども達・家族の心理支援」について講演していただきました。CLSによる心理的支援はこどもが主役の医療にために、こどもの視点、本音、誤解を理解してこどもと接することから始まります。心理社会的ニーズのアセスメントを行った上で、心理面の治癒的効果のある遊びをこどもと一緒に行います。遊びの中で病気に対する恐怖や葛藤に立ち向かい、乗り越えることを可能にしていきます。心理的プレパレーションとして、病気についての理解、心の準備、主体的対処への支援を行って、ストレスを和らげることができるようにします。家族や医療スタッフも含めて、こどもが主役の治療作戦会議を行い、治療のロードマップをそこで作っています。また、非薬物的アプローチによる苦痛の緩和、命や死に向き合うこどもへの支援や、こども同士でのピアサポートやグループセッションも支援しています。病院内にCLSはひとりしかいませんが、小児患者の処置や検査や手術にまですべて立ち会っているとのことでした。

3番目の講演は、兵庫県立こども病院薬剤部の薬剤師である坂本有里恵先生に「小児がん患者への薬剤師の関わり」について講演していただきました。小児の化学療法は多くの治療が臨床試験として実施されていて、治療計画書により細かく指示されています。レジメンは複雑であり、成人と違ってクールごとに抗がん剤の投与量も違っているため、レジメン登録も原則として7日分ごとになっています。小児特有の問題点は、服薬コンプライアンスが悪くなりがちで、大きい錠剤やカプセルは粉砕や脱カプセルで対応しています。悪心・嘔吐の評価は摂食の度合いや家族への聞き取りで評価を行っています。抗がん剤の投与量の算出方法やGFR算出も特別なものを使用しています。

今回の3名の先生方の講演は内容の濃いものであり、講演後は多くの熱心な質問がありました。滋賀医科大学附属病院からの参加者もあって参加者の関心度の高い講演会になりました。